緊急事態におけるSPEEDIの流れ

 原子力災害特別措置法等に定められる10条通報や15条通報など、原子力災害緊急事態宣言にいたる事故が生じると、文部科学省は原子力安全技術センターに対し、SPEEDIを緊急時モードで起動するよう命令することになっている。

また、法令の定める原子力総合防災訓練による知見として、正確な放出源情報を入手するのに1〜3時間程度かかってしまうことがわかっており、場合によっては緊急事態にいたった問題と同じ原因で放出源情報が得られない可能性も想定される。

しかしながら、原子力災害は特に初動が重要とされており、放射性物質が大気に放出されるよりも前、せめて同時に住民の避難計画を進めることが望ましいとの理由から、緊急時モードで起動した直後は、放出源情報を単位量放出という一定の放出を続ける状態を仮定し、各種予測計算を始める運用が定まっている。

そのように緊急時には正確さよりも迅速さという原子力災害の基本方針に則った運用の結果として、特に重要とされる予測風速場図形予測濃度図形予測線量図形は、緊急時モ−ドで起動してから20分程度で、文科省、経産省、原子力安全委員会、関係道府県、日本原子力研究開発機構、外務省、オフサイトセンター等の端末に配信することができ、迅速な初期の防護対策や、緊急時モニタリング、実測のモニタリング結果と比較して実際の放出量を逆推定する資料などに使われることが期待されている。

この運用は環境防災ネットにあるSPEEDIの解説でも、予測情報の提供として説明されている。

また、緊急時モード起動後、最初の単位量放出に基づく予測計算図形が作成された後も、1時間ごとに最新の予測計算図形が配信され続けることも決まっている。さらに、それらの図形とは別個に、必要に応じて仮定の放出時間や放出量による任意の予測計算をさせることもできる。

たとえば、ベントなどの意図的な大気への放射性物質の放出が必要となる場合、その影響を推定するために、仮定の放出量による予測計算をさせるといった具合である。

実際に、首相以下閣僚も参加する原子力総合防災訓練では、放射性物質が大気中に放出される直前から同時期に住民の避難を実施するために、放出源情報の取得を待つのではなく、仮定の数値で想定したSPEEDIの予測計算をおこない、放射性物質の拡散傾向等を予測することで、3方位67.5度方向の扇形を、避難区域として設定する訓練などもしているのである。

ところが、菅総理以下閣僚は、訓練を覚えておらず、義務であるはずの報告書も未定出という怠慢も発覚した。麻生政権時代は、無駄遣いと揶揄されながら、かなり真剣な訓練をしている。

ともあれ、この怠慢が、SPEEDIを使わず、政府官邸側に期待されていた原子力災害の対応を、充分にこなすことができなかった失態に繋がっていることが明白である。
参議院予算委04月18日第11号参照

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