デバンカーとは、懐疑主義的な活動をおこなうなかでも、個別事例のデバンキング(Debunking)を専門におこなう人物のことを指す用語である。また、元来、デバンカー(Debunker)という呼称は、皮肉屋(cynics)や嘲る者(scoffers)と並ぶような種類の、ネガティブな評価が内在する蔑称に近いものでもあった。
訳書では、しばしば「否定論者」や「否定屋」となっており1、実際に意味合いとしては適切な表現かもしれない。そのため、デバンキングやデバンカーという言葉は、少なくとも公平な態度を心がける懐疑論者にとっては、あまり喜ばしい表現ではなかったようだ。
たとえば、懐疑論者として非常に多くの超常現象や心霊現象を暴いてきたジョー・ニッケル(Joe
Nickell)は、20世紀を代表するデバンカーの一人であることに疑いはないが、本人はデバンカーという呼称を明らかに批判している。
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「・・・この本は、対象にオープンな気持ちで向かい、説明は誇張したり抑制したりせずに徹底的に検証し、確認してから伝えようという姿勢で書いている。盲目的な信奉者(Believer)ではなく、頑なな否定論者(Debunker)でもなく、あらかじめ結論を用意しない「調査者(investigator)」として事実を追うつもりだ。」
『ニッケル博士の心霊現象謎解き講座』まえがき |
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こういった言い回しからもわかるように、元来は「結論を決めうちして否定のための否定的結論を出す」という否定論者としての意味合いが強い。
しかしながら、近年ではデバンキング(Debunking)が、悪い意味を含まず「疑似科学などを暴く」という意味で、懐疑論者にとっての標準的な用語として使われているなど、変化がある。
この価値評価の変遷は、まず現代の懐疑主義的な活動の祖2でもあるマーティン・ガードナー(Martin
Gardner)が、「自分が取り扱う話題は徹底的にナンセンスな疑似科学(それは"異なった意見"ではなく"明白に誤り"である
ものを対象としている」という自負と、そして「抱腹絶倒一回は三段論法千回に勝る」というH.L.メンケンの指針に沿い、堂々とデバンカーを自称3しだしたことも影響があるだろう。
日本においては、元から疑似科学の虚偽を暴く行為や、それをする立場を表現する適切な用語がなかったこともあり、皆神龍太郎が自称として用いたことで認知され、蔑称としての用法よりも先に、カタカナ読みでの「デバンキング」と「デバンカー」という言葉が浸透していくことになる。適切な語がなかったなか、この用語を根付かせた功績は皆神に帰するところが大きい。
現在、日本語で「デバンカー」という場合は
「超常現象や疑似科学の個別事例を懐疑的に調査し、虚偽を暴く調査者(investigator)」
という意味が近い。
なお、デバンカーは、しばしば否定のための否定、似非懐疑主義に陥ることも少なくない。とりわけ、否定的結論を決めうちした議論のため、公平性を欠いていたり、少し調べれば確認できる程度の誤った否定情報を鵜呑みにするなど、信奉者達と似た誤りをおかすことがある。
しかし、デバンカーは、質はどうあれ調査に基づいた否定論を提出するため、安直な否定論者のように、深刻なほどデタラメな4主張をすることは少ない。
代表的なデバンカー
デバンキングと同様の活動は、非合理批判が活発化した啓蒙時代以降から頻出するといえるだろう。たとえば、18世紀初頭、ジョナサン・スイフト(Jonathan
Swift)
が職業占星術師を予言対決でこき下ろした活動は、デバンキングとはちょっと違うが、実質的に、マーチン・ガードナーなどに通じるものがある。ファラデー(Michael
Faraday)やガウス(Carl Friedrich Gauss)によるテーブル・ターニング(Table
turning)の実験は、まさにDebunkingである。
そして、心霊主義と交霊術が全盛を迎えると、それらを専門に狩るデバンカーも登場してくる。
それが、フーディーニとマリオットだ。ここでは、この二名に加え、現在、もっとも偉大なデバンカーでもあるランディを、簡単に紹介する。
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ハリー・フーディーニ (Harry Houdini)
1874年3月24日 - 1926年10月31日
本名:エーリッヒ・ワイス(Erik Weisz)
アメリカでもっとも有名なマジシャンであり、伝説的な脱出王である。マジシャンではアメリカ史上初の切手にもなった好漢。
また、生涯をかけて職業霊媒の詐術を暴き続けたことでも有名で、いまをもって多くの懐疑論者やデバンカーから尊敬されている。
心霊主義時代のジェイムズ・ランデイ(あるいはランディが現代のフーディーニ)といえば、どの程度かわかるだろう。
ちなみに、ジョー・ニッケルはフーディーニに憧れているそうだ。ファン多し。
なお暗号は「ローザ・ビリーブ」だ。 |
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ウィリアム・マリオット(William marriott)
フーディーニと同時代に、イギリスで活動した霊媒術のスーパーデバンカー。
日本語情報・英語情報ともに極端に少ない5ため、あまり有名ではない(?)が、少なくとも心霊主義の全盛時、その批判者としてはかなりのビッグネームだったらしい。
とくに、悪名高い「インチキ霊媒グッズ」のカタログを入手し、それを使って実演したこともあれば、美女っ子霊媒フローレンス・クックの演目「K・T・キング」の実体化なども、どのトリックを使ったのかまで特定している。
ほか、心霊主義のしょうもないビリーバーであるコナン・ドイルに実力を認めさせたり、ハリー・プライス(有名な肯定的研究者)に協力するなど、20世紀前半の心霊主義シーンに深く絡んでいる。 |
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ジェイムズ・ランディ(James Randi)
1928年8月7日 -
懐疑主義の活動が本格化したCSICOP創立以降で、もっとも有名にして、実績のある行動的なデバンカー。
懐疑主義的な意味では、現代のフーディーニと呼んでも許されるだろう。
デバンカーとしての業績は多く、また100万ドルチャレンジは、それが存在するということだけでも、インチキ超能力者への対抗手段を提供してきた。
しばしば行き過ぎた否定論を行うなど、懐疑論者からも批判的に受け止められる発言などもあるが、それでもなお、ランディの活動と実績は偉大で、多くの懐疑論者は、ランディを尊敬し、その業績に敬意を払っている。 |
彼等は、まさに生粋のデバンカーであるが、他にも、著名なデバンカーはおり、邦訳書もあるマーチン・ガードナー(Martin Gardner)やジョー・ニッケル(Joe
Nickell)、The
Skeptic's Dictionaryのロバート・キャロル(Robert
Carroll)も、世界的に知られるデバンカーである。
PJSのアルフレッド・シム(Alfred
Sim)はいわずもがな、ランディが好きなTV番組(とmyspaceのプロフに書いてある)『Mythbusters』の二人組みペン&テラー(Penn and
Teller)も有名である。そのほか、故人ではあるがフィリップ・J・クラス(Philip J.
Klass)のような、UFOに特化したデバンカーもいる。
1. 訳書では、しばしば「否定論者」や「否定屋」
ジョー・ニッケルの『ニッケル博士の心霊現象謎解き講座』では、デバンカー(Debunker)が「否定論者」とされている
他、ロバート・アントン・ウィルソンの『New Inquisitio』でも否定論者と訳されている。
2. 現代の懐疑主義的な活動の祖でもあるマーティン・ガードナー(Martin
Gardner)
特に私個人だけの見解ではない。同じ所見を述べているのでマイクル・シャーマーを引用する。
「The modern skeptical movement is a fairly recent phenomenon dating back
to Martin Gardner’s 1952 classic, 」 The Skeptics Society A SKEPTICAL
MANIFESTO The History, Meaning & Limits of Skepticism より
ひとまずThe
modern skeptical movement という意味では、やはりガードナーを起源をするのが適切だと考えて良さそうである。
3. デバンカーを自称
ガードナーは『インチキ科学の解読法 ついつい信じてしまうトンデモ学説』他
皆神は、mixiのHNでも使用している。
4. 安直な否定論者のように、深刻なほどデタラメ
私が見た中でもトップクラスの事例は次のもの
「人の生まれ変わりも絶対にない。死んだ人が焼かれると、人の体を構成していた原子は一夜にして中空にばらまかれる。死後3年ぐらいすると、原子は地球全土に散らばる。そうすると、私が死んだあと、私の原子が例えばイタリアに全部再び集まって、生まれてくる子供に結集するなどということは、エントロピーの増大の法則から絶対にない。従って前世はない」『オカルト徹底批判』p92
5. 日本語情報・英語情報ともに極端に少ない
いや本当にこれほどの人物なのに、異常なほど情報が少ない。
日本語では『超常現象の辞典』リン・ピクネット著で項目があるが、他ではみかけない。
WEB上でもウィリアム・マリオット(William marriott)の名前で検索してもほぼ出ない。
しかし、2008年になり、『American
Ghost Society』に新しい記事が出ていたため、さらに確認することができた。参照:Exposing
the Frauds with William S. Marriott 他、未読だが、こちらの本も詳しいようだ。お金と英語脳に余裕ができたらぜひ入手したいものだ。
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