AX 7回の落雷 ロイ・サリバン (Human Lightning Rod Roy Sullivan)

 

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7回も雷に打たれた男 ロイ・サリバン
(Human Lightning Rod Roy Sullivan)



 あなたは人生で7回も雷にうたれた不運な男性をご存知だろうか?

彼の名はロイ・サリバン(Roy Sullivan)望まずして人間避雷針(Human Lightning Rod)の異名をとってしまった悲運の男。

ロイ・サリバン――正しくは、ロイ・クリーブランド・サリバン(,1912 – 1983)は、ヴァージニア州にあるシェナンドー国立公園(Shenandoah National Park)の監視員(Ranger)であった。
※「Ranger」は、日本では管理人だが、米では(森林の)監視員である。

不幸にも、彼の人生は7回の落雷によって人々に知られている。いや、それだけではなく、36年間で7回の落雷でも生存しておきながら、失恋を苦に銃で自殺したとされている。

この不幸な男ロイ・サリバンは有名だったらしく、彼が自殺したという悲報は、ニューヨクタイムズでも報道されるほどであった。("Roy Sullivan" 『The New York Times』 , 1983/9/30)

と、これが一般的な紹介であるが、こういった面白い話だけあって、真実からのぶれが大きくなって伝わってしまう傾向は仕方がない。

しかしながら、サリバンの落雷は、世界記録としてギネスブックに認定されているため、それなりにしっかりした情報も残っており、尾鰭のつき方は普通の「奇妙な話」よりマシである。

もっとも、それでも風説には誤解もあり、とりわけ日本語情報の質がかなり悪いことも判明した。そのため、できるだけ「真実のロイ・サリバンと7回の落雷」についてまとめておきたいと思う。

だが、その前に、まず人体への落雷の種類を紹介しておきたい。

なお、今回の調査の前段階として落雷について調べたのだが「かみなりねっと」と「National Geographic News」にある「Flash Facts About Lightning」が非常に有益だった。

「かみなりねっと」の人体への落雷によると、落雷といってもピンキリで、直撃雷、側撃雷、歩幅電圧障害の3種類があるそうで、簡単に説明しておこう。

 直撃雷…もっとも恐ろしく、我々がイメージする天罰風の落雷。雷雲から直接人体へ落雷するケースで、致死率80%という危険度。グラウンド、平地、山頂等の開けた場所での落雷がこれになりがちだ。ただし、人体への落雷のうち直撃雷はレアな部類で、そうそうあるものではない。

側撃雷…落雷を受けた物体や人の近くにいるときの放電による被害。俗説を信じて大木の下に避難したり、雨宿りをしているときなどに起きるようで、現実にある雷による死傷事故のほとんどが側撃雷によるものらしい。

歩幅電圧障害…落雷地点の近くで座ったり寝転んでいるときに、地表面に流れる電流に感電すること。痺れや痛み、やけどを負うことがあるようだ。そんな状況で寝転ぶやつは、ある意味ではダーウィン賞な気もするが、お昼寝中なら仕方ない。

ちなみに、「かみなりねっと」による被害件数についての調査では、朝日新聞に掲載された国内の雷被害を98年〜01年まで集計し内訳をチェックしている。

その期間で新聞に掲載された落雷事故件は387件。28%が停電で、次が交通への影響、火災など家屋への被害と続いている。

我々が注目する人体への落雷は、387件中16件で、新聞記事になる落雷被害のなかでも、少ない4%程度であった。

では、基本知識も備えたところで、ロイ・サリバンの落雷と人生を説明しよう。
 


ロイ・サリバン 落雷7発の軌跡と最期

 第一回:1942年

 サリバンが最初に雷をくらったのは1942年である。彼が監視塔にいたとき、足に雷が落ち、足の親指の爪を失っている。結構というか、かなりのダメージだが、命は助かっている。ちなみに、これは非常に危ない状況の落雷だったようだ
第二回:1969年
 サリバンにとって二度目の落雷は、27年後の1969年であった。サリバンが山道をトラックで運転している最中のこと、トラックに雷が直撃した。

幸いにも眉毛を焦がした程度の軽症で済んでいる。なお、文献によっては、意識を失ったという記述もあるが、そこまで詳しい記録は残っていない。

また、車両への落雷は、基本的に、外をとおってタイヤを吹っ飛ばすような振る舞いをするだけで、普通は、車内でおとなしくしていれば安全とされている。そう、意外にも、乗り物の中は雷が酷いときの避難場所として、かなり優秀らしい。

そういうわけで、車内にいたのに、頭と眉毛に被害が及ぶケースは珍しく、落雷と関係するサリバン固有の物理的な特性の存在が示唆される落雷である。

そして、このニ回目以降、落雷の頻度が加速するのであった。
第三回:1970年
 車内での落雷から、わずか1年後の1970年、三度目の落雷を経験する。

恐ろしいことに、自宅での出来事で、手紙をとりに庭を歩いているときに雷が落ちたそうである。このときには、彼の奥さんが裏庭で洗濯物を掛けている最中だったようで、サリバンは左肩に怪我を負い、奥さんも軽症を負っている。幸いにも夫婦ともども大事にはいたらなかったようだ。直撃雷なのか側撃雷なのか不明。
第四回:1972年
 四度目は前回からニ年後。サリバンが公園の管理センター(ranger station)にいるときに雷が落ち、髪が燃える被害を受けている。

この頃から「人間避雷針」と呼ばれ始める。

なお、1989年7月の『サンクトペテルブルグタイムズ』に掲載されたインタビュー記事を読むと、この四回目の落雷から、心に傷を負い始め、「超常的な力が自分を狙っている」と信じはじめた様子が伺える。

この落雷以降、トラックに乗っている間に嵐が来ると、身震いして道路わきに停車し、振るえながら身を横たえて耐えていたという辛い体験を告白している。
第五回:1973年
 次は1年後の1973年8月7日。この五回目の落雷から噂に尾鰭が付きはじめ、一般的な説明では、パトロール中のトラックに直撃し、車は爆破し、車内から放り出され、髪が燃え、左の靴がダメになった、という壮絶な話で伝わっている。

だが、実際は異なるようだ。

彼は定期的なパトロール中に、低い雷雲が形成されるのを発見し、いまにも自分に向かって来そうなため、トラックから降りる方が良いと判断して降車したという。あまり良い判断ではない。

サリバンは、そのときの様子を「LIGHTNING, NATURE'S STRIKE FORCE」のインタビューで次のように説明している。
「私は、稲妻が雲から撃たれるのを実際に見ました」
「そして、まっすぐ、私のところへ来ていました」
とある。そして、トラックに雷が落ちたという。被害は、髪が燃え、右の膝下から左腕、左足ときて左の靴がダメになったという状況である。
第六回:1974年
 前回から1年も経たずして翌6月5日に再度の落雷。このときは、キャンプ場を見回りしているときに雷雲をみて「自分を追っている」と想い、逃げようとしたが失敗したと報告している。そして、結局、雷は落ちてきて、左のスネに怪我を負ってしまった。

四回目以降、確かに心を病みはじめ、このときは被害妄想的だが、安易に見過ごせないのは、本当に被雷しているということである。もうどうしようもない。

雷に意志があるわけもないが、自然現象として、本当にサリバンを追うような振る舞いが生じている可能性がないか、残念ながら分からないし、私には、仕組みについて検討もつかない。ただ、サリバンが異常なまでに不運で、かつ単純な被害妄想だったというよりは、何が物理的な因子があるのではないだろうか。
第七回:1977年
 最後の落雷は3年後。1977年6月25日で、現存する記録から考えると、この最後の落雷がもっとも重症だったようだ。これまでは、基本的に側撃雷であり、本当にやばそうな直撃はなかったように思われる。

しかしながら、この最後の落雷だけは酷い。サリバンが釣りをしているときに直撃したらしく、胸と胃に怪我を負い、病院に運ばれたときは重症だったのである。

サリバンは、インタビューで「当然、人々は私を避けます」「あるときチーフと歩いていたところ、彼は(不安になったのか)「あとで会おう」ということで、そそくさと逃げていきました」ということなど語っており、度重なる落雷が自分の私生活にも重要な影響を及ぼしてきていることを悲しげに述べている。
サリバンの最期:1983年
 七回という壮絶な落雷経験で、たびたび髪を燃やされ、眉を焼かれ、肩、スネに火傷を負い、足の親指の爪を失い、胸と胃―そして心にも―重症を負ったサリバン。

そんなサリバンは、71歳のときに、落雷とは関係のない、失恋が原因で、自分の頭に銃を向け、自殺したと伝わっているが、失恋が原因とする初出がとても怪しい。

当時、『ニューヨークタイムズ』掲載されたロイ・サリバンの訃報記事では、動機は言及がないし、それ以降の記事も初期のものに失恋の話はなく、動機は不明とある。

ともあれ、それは、最後の落雷から6年後の1983年のことだった。度重なる落雷に怯えた彼の人生は、笑い話として語るには重い。

なお、落雷7回は世界記録としてギネスブックに認定されている。またエンパイア・ステート・ビルのギネスブック展示場には、2回目か6回目かの落雷によって焦げ穴のできた、ロイ・サリバンの帽子とゴルフシューズが展示されており、セットで6500jの価格が付いている。

WEB上では、なぜか誤って伝播している件

  この件についてWEB上にある日本語情報は、どうも1つか2つの出所から派生しているようで、明らかに間違えた情報が流通しているようである。不思議なことに、この話を日本語サイトで検索すると、どういうわけか設定が間違えている。

最も流通してしまっているのは次のようなバージョンである。

「 ニューヨークの公園管理人、ロイシー・サリバンという人は、勤務中に7回も落雷に打たれたが、落雷では死なず、失恋のため自殺で亡くなった。」
という話になっている。事実上、WEB上のほぼ全ての記事が「ロイシー」さんになっており、「落雷では死ななかったのに、失恋で自殺したことで有名」という笑い話になっている。

この誤りの発端も確認したところである。まず「ロイシー」という名前の部分は、単にネタ元の本がそうなっているためだ。引用しよう。
「 ヴァージニア州の公園監視人ロイシー・サリバンさんは、1942〜1977年の間に、なんと七回も雷に撃たれたという。サリバンさんはその間に足の親指の爪と眉毛を失い、腕や脚に怪我を負ったが、命に別状はなかった。1983年9月、彼は失恋して自殺という。いい意味でも悪い意味でも、愛は雷より強かったということなのだろうか……。」『今さら誰にも聞けない555の疑問』 平川 陽一著 , 廣済堂文庫 P343
この本が元のようである。これは、Roy Cleveland Sullivanを「ロイ・C・サリバン」とすべきところ、誤って「ロイシー」にしてしまったのだと思われる。それ以外は普通の伝聞である。

これよりも、もっと誤った情報の発端は、どうやら2004年『唐沢俊一の怪コラム 知らなきゃ良かった!』第六回「なかなか死ねない話」のようである。
「 ニューヨークの公園管理人ロイ・サリバンという人は、勤務中に7回も雷の直撃を受けた経験を持つが、軽いやけどを負った程度でけろりとして生きている。」
ここでは、ロイ・サリバンという名前だけはあっているのだが、他の部分が誤っている。

1.「ニューヨークの公園管理人」←正しくは「ヴァージニア州にあるシェナンドー国立公園」
※2度目の落雷で焦げた帽子が展示されている、ギネスブック展示場の場所が、ニューヨークで、その記事を読み流してそう書いてしまった、ということかもしれない。

2.「7回も雷の直撃」←直撃雷は1回か2回で、少なくとも5回の落雷は直撃ではない。

3.「軽いやけどを負った程度でけろり」←これはちょっと酷い・・・。

4.「失恋で自殺」←これは英語資料でも頻出するが、先に書いたように、初出が不明というか、自殺の動機は不明という方が適切だと思われる。

恐らく、この二つのネタ元が合体した語情報が、WEB上では流布してしまったようだ。
 

参照情報

 この手の話は、インチキや誇張がつきものであるから、伝説を軽信するわけにはいかない。しかしながら、幸いにもサリバンの場合、ギネスの認定があるためか、この手の話としては比較的信頼できる情報も多かった。いろいろ情報はあるが、以下のサイトが役に立った。

"Roy Sullivan" nationalparkstraveler.com Bob Janiskee
"LIGHTNING, NATURE'S STRIKE FORCE" 『St .Petersburg Times』 Jul 23, 1989
"googl answers"
"Have people actually survived being hit by lightning multiple times?" Cecil Adams.
"The REAL X-Men - About Paranormal Phenomena" Stephen Wagner.


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