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 実話

霊界探査人とゴールッドバッハ予想
 (Fool man with Goldbach)


 これは正真正銘、本当に本当の実話である。

あれは2003年頃のことだと思うが、当時、私がまだ疑似科学の信奉者等と熱心な議論をしていた時代のYahoo掲示板での出来事である。それは「死後生存」のトピックだったと思う。

基本的にビリーバーよりも批判側の私の方が死後生存の研究に関して詳しいという情けない状況のなかで、ある日、一級建築士と称する中年が、謙虚さのなかにたっぷりの自信を隠した雰囲気で、議論の場に登場してきた。

彼によると、なんでも、睡眠するときに、しばしば霊界に行くとのことで、霊界を観察したり霊界の人とコミュニケーションをとったり、頻繁に霊界を訪問しているそうだ。素晴らしい。

普通、それは「夢」というのではないか、などと思いがちだが、彼がいうには、明らかに普通の「夢」ではなく、何度も訪問しているし、訪問中のリアリティが、夢とは確実に違うというのである。

そんな一級建築士殿は、自分の霊界訪問について、多くの人に認めてもらいたいし、科学的な検証には、ぜひとお付き合いしたいという大変に前向きな主張をしていた。

そのためから、嬉々として状況を語ってくれた。

霊界は科学が発達していて、建築物の精度は素粒子レベルだという。
また、霊界では、非常に遠まわりな演出で、宇宙物理学の知識を授けてくれたという。

まあ、そういった話が出てくるのだが…状況をヒアリングした限り、彼が作り話をしているわけではないと仮定した場合、それは「繰り返し起きる明晰夢」のようであった。霊界関係ない!

ただし、私は、明晰夢説を採用してもらおうとはせず、科学的な検証にお付き合いしたいという彼の主張に目を向け、実験を提案してみた。

それが成功すれば、彼の主張は手っ取りばやく世間に認められ、科学者が振りむくはずである。

そう、よくよく考えると、チャネラーやコンタクティには、次のような質問をするのがおすすめであると、カール・セーガンは提案していたではないか。

 1.簡単な質問である
 2.人類が回答を知らない
 3.正解がくれば正解だと判るような質問

だが、そんな都合のよい質問があるか?

ある。たとえば、巨大数の素因数分解や、フェルマーの最終定理の簡単な証明を質問するのはどうだろうか?いや、それは証明されてしまったので、リーマン予想の証明はどうだろうか?

しかしながら、一級建築士殿は、フェルマーの最終定理ですら命題の意味が理解できないほど脳が劣化していたので、リーマン予想など、命題の意味すら永久に理解できそうもないのだ。

そこで、私は、ゴールドバッハ予想の証明を霊界で訊いてきて欲しいという提案をした。

ゴールドバッハ予想は「4以上の偶数は二つの素数の和である」という超簡単な命題である。

例として、6=3+3、8=3+5、10=3+7、12=5+7、14=3+11…52=5+47…100=3+97…

計算の結果数十兆以上でもずっと成立していることが判っているのに、証明ができない未解決問題でもある。 かつて、解析学の権化といわれたレオンハルト・オイラーが「全く手のつけようがない」と匙を投げたというほど攻略のしようがないのだ。

そういうわけで、回答が得られようが得られまいがいいから、ぜひ、科学が進んでいるという霊界の人々に、ゴールドバッハ予想の証明を質問してきて欲しいと頼んだわけだ。

もちろん本当の証明が得られれば凄いことだし、得られなくても、霊界を訪問しているという主張が否定されるわけではないので、とりあえずアッチにいったらぜひ話を聞いてきて欲しい、という主旨で提案したのである。私はフェアである。

それは、彼にとっては、何もデメリットがないはずの実験であった。

隠された意図
 実は、この質問には隠された意図があった。というのも、チャネラーさんとかそいう人は、チンプな質問には答えてくれるが、こういった質問は無視する傾向にある。そのため、自己欺瞞に満ちたその手の人は、「質問をする行為そのものを拒否するのではないか」という私の経験則があり、その合致事例となるか反例となるかのサンプルとしての期待もあった。

つまり、私にとっては、彼が、霊界とやらで質問し、何がしかの答えを持ち帰ってくる、という行為をやるのかやらないのか、それだけがキモだったわけである。それに、明晰夢のなかでゴールドバッハ予想の証明を質問した場合の回答を持ち帰るというのは、普通に面白いではないか。
というわけで、本題に戻ろう。

私は提案した。科学が進んだ霊界で、ゴールドバッハ予想の証明を質問してみてね、と。

ところが…この一級建築士殿は、「素数」ってなんでしたっけ?な有様であった。

どうしてくれようか。

でも、私は提案者の誠意として、彼に素数を教えてあげた。勉強を見てあげた。

その時点で嫌な予感はあったが、一級建築士殿の理解力は想像を絶するほど問題を抱えており、たかだか素数の概念を理解するということですら、なまなかなことではなかった。

結局、素数の説明だけで2〜3日が過ぎたのだが、一応、命題は理解できたようだ。

さあ、いよいよ準備が出来た。

いざ、霊界のガウスを探して訊いてきてくれ〜!

もし、回答が得られなくても、貴方の評価には影響しないから、とりあえず返事をもらってくださいね、と…。

と・こ・ろ・が ここから衝撃の展開が待っていた。

なんと、一級建築士殿はゴールドバッハ予想に虚栄心をくすぐられてしまったのだ!

も〜〜〜勘弁してくれよ。マジで、マジで頼むよ・・・orz

あろうことか、コヤツは、我々の努力をドブに捨て

 
「私には知識はないが知恵がある」

などとほざき、 だから「専門家にはない視点から証明できるのではないか?」などと、FAQばりのヨタを飛ばしたのだ――― ( ゚Д゚)ポカーン

…私は怒った。

大激怒した。

オマエの役目は霊界とやらで、ゴールドバッハ予想の証明について質問し、どのような返事があったのかを、正確に持って帰ってくることだ!

自分で証明したければ誰にも知られずに一人でやれ!

わかったかこのトンチキめ!ムキー

ところが一級建築士殿は、何をトチ狂ったか

 「証明を第三者に訊けとは情けない!自分の頭をつかいなさい!

などと尋常ではない逆ギレをかまし、掲示板上でゴ−ルドバッハ予想の証明に取り組みだしてしまったのだ――そう、素数を知らなかった50男が、である。

しかも、自分では100以下の素数すら抽出せず、とにかく努力しない。

にも関わらず、人類史的な発見ができる可能性も、少しはあるさ、とでも思っているようだった。

それが行間から伝わってくるのがまた腹立たしい。
 
やんぬるかな。

その醜悪な振る舞いを、賢者の志でもあるかのように脳内変換する図太さ。

一切の客観性を排した盲目的な自己認識。

それは、己を甘やかして生きた50年のツケなのであろうか?

50年かけて培った、常人が到達し得ぬ凄まじき自己欺瞞の結晶なのだろうか?

そこに悪意はなかった――ただ、あまりにも醜悪だった。

本人は賢人気取りのつもりの達観屋さん。ゆえに質が悪い。

結局、一級建築士殿は、霊界での質問という本来のお題を無視し続け、人々の怒りを無視し、私の手間を理不尽に踏みにじり、悪びれる様子もない。

ひたすら証明に取り組んでしまったのだ。

そうだよね、「知識はないけど知恵がある」んだもんね…。・゚・(ノ∀`)・゚・。やーん

 …もはや泣き寝入り状態のワカシムであった。

そして一週間が経っただろうか。奴は戻ってきた。

なんと、
ゴールドバッハ予想を証明するから見とけよ!と言わんばかりの再登場。

一級建築士殿は、流れるような筆致で掲示板上に証明を綴って魅せてくれた。

一応、私は真面目に読んであげたよ…

 ふむふむふ…うっ

 私は3分で見抜いてしまった。

 そう――彼が証明しようとした命題が

 
「6以上の偶数は二つの奇数の和である」

ということを!

 おしまい

 
※本当の本当に実話

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