懐疑論者の祈り


 東電に対する隠蔽体質という評価の妥当性の検討

 何をいまさら、と思う向きもおられようが、東電の隠蔽体質という評判の妥当性について、もう少し具体的で客観性のある根拠に基づいた評価が欲しいと思っている人は、けっして少なくないのではないだろうか。

少なくとも、東電の不祥事の歴史について知識のない私にとって、これまで目に付いた東電評は、非難にせよ弁護にせよ、具体性も客観性も不十分である。

さらにいえば、現時点での私は、深夜の東電会見から垣間見える東電上層部の姿勢に対し――現政権に対するほどではないが――強い憤りを感じており、すでに嫌悪感すら芽生えている。

しかし、だからこそ、私は、東電について悪い評価に偏向するリスクがあることを自覚すべきだと思うし、なにより、私自身の信念にフェアであるためには、東電について、できるだけ公平で妥当な評価をするよう努力すべきであると考えるのだ。そこで、東電の隠蔽体質問題について検討してみた次第である。

また注意点として、社民党と共産党は東電をかなり嫌っているため、国会ベースでの議論は慎重に分析する必要がある。また、現政権も、東電に責任をなすりつけようとしている様子が顕著で、この点も注意しないと、東電を必要以上に悪く評価する可能性がある。※もちろん負うべき責は小さくないが。

※本項の情報は、出典が確認できたものだが、私が門外漢であることに加え、報道ベースでしかない情報も多く、報道そのものが実情をとり違えている可能性の肯定は判断しきれていない。しかし、東電の評価を測るには真偽の精度が高いにこしたことはないが、報道ベースで得られる情報を総括することで十分だと考える。

なお、
東電というだけで、社員個人に非難を向けるのは不当なのでやめよう。実際に、今まさに東電が負うべき責めは、東電上層部、電力業界全体、経産省、保安院、一部の政治家に帰すべき問題だからである。


隠蔽体質についての判断

 ざっと調べただけでも、東電の原発に関する危険な隠蔽、不正、改竄は、長い歴史のなかで常態化していたことがわかった。さらに、2007年までは、隠蔽体質が顕著で、それまでに発覚した不祥事の多くは、自浄作用によるものではなかった。

したがって、過去の実績からいって、東電に隠蔽体質があったという指摘は妥当である。

しかしながら、2007年には本格的に自浄作用を発揮する必要を感じたのか、驚くほど過去の不正まで遡り、徹底調査していたことが随所から確認できる。だから、本気で隠蔽体質から脱却しようとした、ということは十分に認めるべきである。

ただ、それでも東電の原発に対する酷い歴史は――東電だけでなく、保安院、経産省など含めて、ということになるかもしれないが――容易に信頼を回復できるものではなく、現状で、不信感を抱かれるだけの重い過去があるのも事実なのである。

そんな東電の隠蔽体質を示す困った歴史は以下のとおりである。
(全部網羅できたわけではないと思うが、十分な量であろう)

1978年11月02日 日本初の臨界事故を隠蔽 公式に認めるのは実に29年後。
 福島第一原発3号機で、制御棒の脱落により日本初の臨界事故が発生。これを2007年3月まで認めず。

1989年01月06日 警報を無視したあげく事故を隠蔽 
 福島第二原発の3号機で原子炉の再循環ポンプ内に部品脱落事故。「東電は前年暮れから、異常発生を知らせる警報が鳴っていたにもかかわらず運転を続けていた」うえに、その事実を隠蔽していた。

1991年(第15回検査)
1992年(第16回検査) 東電社員関与による検査結果の不正行為
 福島第一原子力発電所1号機の第15回(1991年)、16回(1992年)の原子炉格納容器漏えい率検査において、東京電力社員関与のもと、空気を注入することなどにより漏えい率を低下させる不正行為が行われていた。2002年10月25日:中間報告公表、12月11日:最終報告公表)

1998年10月 使用済燃料輸送容器(キャスク)のデータ改竄問題
1999年03月 荒木電事連会長(東電社長)定例記者会見発言要旨

2002年08月29日 東電データ改竄発覚 経緯 
 なお、保安員は2年間にわたり、この問題を隠蔽していた。これは超大事件になっている。
米国General Electric社から指摘された東京電力原子力発電所の自主点検・補修作業に関わる不適切な取扱いについて、29の案件のうち、事実隠しや修理記録の修正など「不適切な点が認められたもの」が16件(2002年8月29日:29件の案件について公表、9月17日:調査結果報告公表)

2002年 柏崎刈羽原発1号機などECCSの故障偽装など定期検査時の不正が常態化していたことが判明。
 ※リンク先blogの見解を考慮すれば、これは前向きな展開だったことがわかるので公平に評価したい。

2005年6月1日 福島第一原発6号機、可燃性ガス濃度制御系流量計の入力基準改竄。
 福島第一原子力発電所6号機可燃性ガス濃度制御系の機能確認に係る保安規定違反について(改善指示)

以上が不祥事の一例である。

・そのほか資料

1998年 電事連会長(東電社長)定例記者会見
 記者会見の内容(原子力関連の改ざん事件が取り上げられている)

2006年 原子力発電四季報第39号報告
 度重なる不祥事を受け、連合による信頼回復委員会の発表(原子力関連は459件)

2007年 東電は、東電、原発の装置故障を隠ぺい、77年からデータ改ざん続ける 
 ※2007年は本格的に自浄作用を発揮させるべく動いた成果が伺える
 当時の朝日新聞の見出しを紹介している情報があり驚愕した。

また、福島原発の安全認識についても、かなり問題があったと思う。

20年前、4年前、そして2007年以降に絞っても、2年前、昨年4月、10月と、たびたび福島第一原発の危険性は指摘されていた。それらが今回の事態を契機に掘り起こされてきたが、2010年10月の電源喪失で容器破損」東電報告書検討せずという件は、批判されても仕方が無いのではないかと思う。

「東京電力福島第一原子力発電所2、3号機で使われている型の原発は、電源が全て失われて原子炉を冷却できない状態が約3時間半続くと、原子炉圧力容器が破損するという研究報告を、原子力安全基盤機構が昨年10月にまとめていたことがわかった。
東電は報告書の内容を知りながら、電源喪失対策を検討していなかったことを認めている。」

今回の震災による原発事故を、想定外だとする声もあるが、原因はどうあれ冷却機能喪失によるリスクは、極めて具体的に指摘されてきた問題あり、想定外という言いわけは通用しないというIAEAや共産党の主張を否定するのは難しい。

【結論】
 東電の根深く罪深い隠蔽体質は確かにあった。しかし2007年に本質的な改善への意欲が垣間見えたが、過去の不祥事が多すぎるため、現段階で、完全に信頼を取り戻せたとはいえない。
現時点で、隠蔽体質という非難は、東電の自己責任として甘受すべき範囲である。

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 最終更新2011/6/13 Wakashimu お問い合わせ先


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